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図2 Kaplan−Meier法による三疾患の死亡統計

 

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図3 病気の経過に伴うPalliative CareとTgrminal Careとの関連

 

ると、癌とほぼ同数が心臓病で死亡しており、脳卒中がこれに次ぐ順である。
ここで、癌と同じ死亡率の高い心臓病について、たとえば急性心筋梗塞の場合に病名を正確に告げても、本人も家族も癌ほどショックを受けないところに癌の特殊性があると考える。
次に入院から死亡までの期間について心臓病、脳卒中および癌の生存状態をKaplan-Meier法により比較すると図2のごとく、癌の入院期間は全体として比較的短いのに対し、脳卒中はADLの低下した状態で死亡までの期間が長いものが多く、その中にはLocked in症候群のように瞬きでしか意思の伝達できない気の毒な例も入っている。
心臓病は急性心筋梗塞などで死亡するものは、入院期間が最も短期間である。なお、心臓病死の中には癌の経過中、心筋梗塞で死亡した2例も含まれている。一方、心臓弁膜症や心筋症では入院期間がやや長い場合もある。
入院後の末期患者の経過を考えると、図3のように、最初は痛み、苦しみの除去などPaniative Careが主体になり、やがて病状が進行すると患者は精神的ケアをより強く望むようになり、Pastoral CareなどのSpiritual Careが必要になってくる。
次に終末期医療のために入院してきた患者が自分の病状について正確に知らない場合は病状説明、いわゆる告知が必要であるが、告知については現在の日本では、次の3つの問題があると考えている。
1)末期の癌であることは理解していても、多くの場合助かる可能性を模索している。
2)癌の移転のあることの説明は、その後の落胆に対する配慮などから、すぐにできないこともあり、転移のための症状を説明することが困難な場合がある。
3)患者の残された時間については、医療職者は2〜3週間後のことを心配しているときに、半年後のことを話題にするなど、患者は自分の死をまだ少し先にあると考える場合がある。
そこで、私たちは告知後の患者の心が沈んでいるときに、患者の精神的・霊的な関わりとしてPastoral Careを導入した。この精神的・霊的ケアの必要性についてはMark9)によっても述べられている。
著者はPastoral Careとはキリスト教の精神に根底をおくものと考えている。日野原は「医学と宗教の接点5)」の中でキリスト教の本質について、私たちの有限な体の中に、無限の永遠に残るものを心の中に求める宗教であると述べている。
General Fath10)も同様に、新しい命に対する信仰に向かって自分の運命を受け入れるようなケアの必要性を述べている。そしてPastoral Careの実践のために、次のようなことを心がけた。
1)臨死のような事態に直面している患者は何とか助けを得たいと願っている。
2)そのような患者を理解し、どのような支援ができるかを考え、実行のプランを考える。
3)方法として
a:病床に患者を訪問し、会話を記録する。

 

 

 

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